当センターで日々数多くのお問い合わせを頂きますが、その中でも筆跡鑑定の基本的な事柄についてのお問い合わせが多くなっています。このような状況を踏まえて、ここでは筆跡鑑定の基本的な内容について説明していきたいと思います。筆跡鑑定について知識のある方には当たり前と思う内容も含まれていると思いますが、その場合はご確認用として、いま一度お読み頂ければと思います。

筆跡資料にある日付について

日々行っている筆跡鑑定の対象資料となるものは、日付が記されている場合が数多くあります。

例えば、以下にある鑑定資料となる書類にはほぼ日付が含まれています。

  • 遺言書
  • 協議書(遺産分割協議書)
  • 婚姻届、離婚届
  • 契約書(借用書)
  • 領収書
  • 納品書
  • 受領書
  • 帳簿
  • 出納帳 等

上記のような書類は日付が記されていないと効力がないものがありますので、必然的に日付が記されている事が多いのですが、これらの書類が対象筆跡(調べたい筆跡)と対照筆跡(調べたい筆跡に対して照し合せる筆跡)となる場合は、記された日付が互いに近いものが鑑定資料としてより良いものとなります。

 

なぜ日付が近い方がよいのか?

その理由は、筆者が文字を書いた時のコンディションに違いが少ないと考えられるからです。人が書く文字は書く都度変化します。それは文字を書く時の環境の違い、紙や筆記具の違いもその都度変わりますが、これらとは別に経年によって筆者の書き方が変化します。わかりやすいのは高齢者の筆跡にみられる線の震えです。この線の震えが含まれている筆跡は、同一の筆者であっても文字のあり方は大きく変化しています。

例えば85歳の高齢者が書いたとされる遺言書について、遺言者本人の筆跡であるか否か鑑定を行うとします。
対象筆跡は遺言者が5年前(80歳)に書いたとされる日付があり、照し合せる側の対照筆跡には25年前(60歳)の時に書かれた日付が記されています。
これら2つの筆跡は同一人が書いたものですが、実際には書き文字(筆跡)のあり方は異なっています。

筆跡鑑定は実際にみえている事象について正しく客観的に説明する必要があり、みえていないものについて推論する事はできません。
すべての対象筆跡(この場合は遺言書)と対照筆跡からなる鑑定資料から確認できる範囲で筆跡特徴を見出し、理論的に解説するものですから、同一人が書いたものであっても書き文字のあり方が大きく変化している場合は、あわせて特徴の不一致点も確認されてしまう可能性が高くなります。
鑑定を進める中で対象筆跡と対照筆跡の中で一致する筆跡特徴も取り上げられると思いますが、筆者同一という事実を主張しづらい要素が増えてしまう事でしょう。

 

筆跡鑑定書は公正で客観的であることが重要

筆跡鑑定書の使用用途はご依頼者によって様々ですが、裁判の提出資料として使用される場合も多くあります。この場合、提出される筆跡鑑定書はより公正で客観的な内容である事が要求されますので、目で見て異なる筆跡特徴を同一人の筆跡であると主張するのは難しくなりますし、裁判官を納得させる鑑定内容とはなり得ないでしょう。

 逆に言えば、対象筆跡と対照筆跡にある日付が近い時期のものであれば出来る限り鑑定条件を揃えるという筆跡鑑定の理想に近づき、鑑定を行う前提が一つ整います。その結果として客観的に理解される、効力のある筆跡鑑定内容となるでしょう。

 

まとめ

これまでに述べてきた内容をまとめると以下の通りです。

  • 鑑定資料を選ぶ際には記載された日付に注意し、対象筆跡と対照筆跡の日付は出来るだけ近い時期のものが良い(西暦や平成などの記載違いは問題なし)。
  • 日付のある鑑定資料は、日付の無いものと比べて鑑定内容をより主張しやすい材料になる。

 

追記

当センターでは、5年くらいの期間に書かれた筆跡であれば、問題なく鑑定が行えるとお伝えしていますが、対象筆跡と対照筆跡の書かれた期間が5年以上経っていても鑑定は行うことが出来ます。

また、日付の記載が無い鑑定資料(メモ、手紙など)についても筆跡鑑定が可能です。

鑑定条件等についてはメールやお電話にてお気軽にお問合せ下さい。不明点が多い場合はその場で返答できるお電話でのお問合せが良いかも知れません。

 

お問合せ、ご相談は無料です。先ずはどのような筆跡鑑定を行いたいかお話頂ければ、適切にアドバイスさせて頂きます。